苔論~日本人がコケ好きな理由を本気で考えてみた~

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突然ですが皆さん、「苔」好きですか?

心洗われるほど色鮮やかな見た目、しっとりふかふかの優しい感触、踏まれても地べたに繁茂する健気さ、そして飽きのこない個性豊かなバリエーション。

苔の魅力を語りだせばそれはもう無尽蔵に出てくることは皆さんも周知の事実。

道端に雑草同様生活する身近な存在でありながら日本庭園に取り入れられ、国歌には「苔のむすまで~」と歌われるもはや日本人の心ともいえる苔。

その人気ぶりは京都屈指の人気観光スポット「苔寺(西芳寺)」を見れば一目瞭然。

3,000円という高額な拝観料と事前予約制の厳しい条件にも関わらず、苔の美しさを求め連日たくさんの人が訪れています。

もちろん苔の人気は日本だけでは留まらず、毎年イギリスで開催される世界最大のガーデンショー「チェルシー・フラワーショー」では、苔を多用する日本人庭園デザイナーが金賞を何度も受賞。

その作風から「Moss Man(苔男)」という異名がつけられるほどです。

そんな海外からも絶大な人気を誇る苔ですが、その魅力にはもっと本能的ななにかがあると私は感じて止まないのです。

そこで今回は、苔のもつ内面的な魅力を浮き彫りにしていこうと思います。

 

全生物の祖先は苔?

苔の魅力を解き明かす心当たりは大きく2つ。

まず1つ目は単なる私の思いつきで、特に「日本人」に焦点を当てた内容ではないのでお手柔らかに。

動物界も植物界も、数え切れない程の種の生物が暮らしている地球。

ダーウィンの進化論によれば、地球上の全生物はそれぞれの環境に適して独自の進化を遂げ、その原点には共通の祖先があったと言われています。

では、果たしてその共通の祖先とはなにか。

それは30億年前の海中に生まれた細菌やアメーバ、そして光合成をする藻類だとされています。

そしてその藻類が進化し、地球上初の陸上生物として苔が生まれました。

そう考えると、私たちの祖先は苔だとも言えるわけですね!

母なる苔。父なる苔です。

色々とややこしいしがらみの多い人間社会の中で、ふと苔を目にしたときに「自然に回帰したい」という生物としての潜在的な欲求が湧き上がるのではないかと思います。

そして苔を触ったときのあの感じ。

しっとり湿って艶やかで、なんだかエロティシズムを感じませんか?

動物やら植物やらの垣根を超えた、生物としての本能に訴えかける母性的な魅力を孕んでいるのだと思います。

ちなみに誰がつけたかは知りませんが、苔の花言葉は「母性愛」だそうです。

日本人の美意識「侘び寂び」を体現する存在

2つ目は「日本人」に焦点を当てた内容なので、日本人がなぜ苔好きなのか納得いくと思います。

日本人は本来、「間(ま)」を好み、大事にする民族でした。

「間」とは言葉で説明しづらいものなのですが、実体がないゆえに空間でも時間でも人間関係でも、どんな形や次元でも現れることができます。

例えば2次元では山水画の余白に、3次元では枯山水の白砂に、時の流れが関わる4次元では能狂言や日本舞踊のストップ&モーションに。

日本の伝統芸能はそもそも「間」がないと成立しないんですね。

間取り、間合い、間抜け、間引く、昼間、合間、手間、隙間、空間、時間、人間。

意識してみると今使われている言葉にも、「間」という字はたくさん出てきますね。

明治の文明開花や第2次世界大戦を経て、喪服の色が白から黒に様変わりしたように世界がガラッと変わってしまった日本ですが、まだ「間」の名残を随所に垣間見ることができます。

それはホラー映画、アイドルや廃墟ブーム、「空気読め」や「かわいい」という言葉などですが苔の話から逸れてしまうのでここでは割愛することに。

 

さて、日本の美意識のひとつに「わびさび」があります。

これも感覚的なもので定義が難しいのですが、先ほどちょっと出た「4次元の間」と言い換えることができます。

侘び寂びとは時の流れを感じる「間」なのです。

例えば何年振りかに実家に帰省し、小さな子どもの頃よく遊んでいた埃かぶったおもちゃを手に取ったときのあの感じ。あれも侘び寂びといえるでしょう。

郷愁の念や英語のノスタルジーの感覚に近いですが、より時の流れを感じさせる要素が強いと侘び寂び感も高まります。

そしてそれを感じさせてくれるのが、古来より身近な存在の苔だったのです。

長い歳月をかけて繁茂し成長していく苔。それはもはや可視化された時の結晶といえるでしょう。

なので庭に取り入れると悠久の時が感じられ、歴史感や重み、そしてかわいさ移ろう歳月の儚さを覚えるのです。

日本人が苔好きな理由は「間」の文化がまだ息づいているからだと私は思っています。

苔の小話

この記事を書くにあたっておもしろい話を見つけたので紹介します。

 

コケは岩や地表が長く放置されたときに生え、耕すなどの攪乱(かくらん)が行われていると育たない、との認識がある。例えば「苔むす」という言葉はその状態が長く続いてきたことを示す。これは善悪両面の取り方があり、「転石苔むさず」は、「腰を落ち着けて長く一つのことを続けないと成果は上がらない」の意味に取るのが普通であるが、ときに「活動を続けている人は古びない」という意味に使われる。英語ではA Rolling Stone gathers No Mossで、イギリスでは前者の意味で使うが、アメリカでは後者の意味に使う。-wikipediaより引用

 

同じ苔でも、日本やイギリスでは良いものとして、アメリカでは悪いものとして認識されているのがおもしろいですね。

もちろんアメリカにも苔好きな人々がいるので一概には言えませんが、苔を愛でることは日本文化の継承といっても過言でないかもしれませんね。

逆にもし日本で誰も苔を愛でなくなったとき、それは日本文化の終焉を意味しているのかもしれません・・・。

 

以上、日本人が苔好きな理由について解き明かしてみました。

苔を愛でることは日本人としての大事なアイデンティティだと思うので、苔マニアの皆さんは自信をもって愛で続けてください!

記事・・・飛田亮

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